世界観を変える映画 心に響くスピーチ

【映画で英語の勉強】チャップリン『独裁者』ラストの名演説!

出典:Wikipedia

チャップリンとヒトラー

チャップリンとヒトラーは、誕生日がたったの4日違い。チャップリンは1889年4月16日、ヒトラーは1889年4月20日生まれです。

二人とも世界的に有名になりましたが、陰と陽のごとく、対照的な人生を歩みました。

出典:Wikipedia (Public Domain), Charles Chaplin (1921): 32歳のチャップリン

伝え聞くところによると、ヒトラーはチャップリンの人気にあやかるために四角い口髭をはやしたとか。真偽のほどは確かではないのですが、このような「噂」が流布することが興味深いと思います。

出典:Wikipedia, ヒトラー

出典:Wikipedia, チャップリン

チャップリンは、トーキー映画時代に突入してからも、サイレント映画を撮り続けていました。サイレント映画のほうが好みだったのです。

しかし、ヒトラーの暴挙を垣間見、映画化することになったとき、チャップリンはあれほどこだわっていたサイレント映画ではなく、トーキー映画に転向しました。

演説を得意としたヒトラーに対抗するにはトーキー映画しかないと判断したのでしょう。

『独裁者』(The Great Dictator)はチャップリンにとって初のトーキー映画となりました。

コメディアンの最大の武器

この映画の最大の見どころは、なんといってもラストの演説のシーンです。チャップリンは初のトーキー映画で、自分の肉声で、映画を通して、世界中の人々に訴えかけたのです。

時代は、まさにヒトラーがやみくもに猛威をふるい、第二次世界大戦が開戦し、混乱を極めていたときです。そんな中、ヒトラーを笑い者にし、自分の言葉で批判するなんて、どんなに勇気のいることだったのでしょうか。

本物のコメディアンは、権力者を笑い者にし、批判できる能力を持っています。

「王様は裸だ!」と指摘できるのは、昔から道化(fool, clown)だけでした。シェイクスピアの戯曲でもそれを見ることが出来ますよね。

出典:Wikipedia

道化以外にも指摘できる賢者はいますが、そのような人たちは指摘後に深刻な危険な状況を引き起こしてしまいがちです。

コメディアンの最大の武器は「笑い」です。笑いで深刻な状況を打破してしまう力があります。

ココに注目

本物のコメディアン

笑いで批判できる能力を持つ。

笑いで深刻な状況を打破する力を持つ。

最後の名シーンの背景

一応ちょっとだけ最後のシーンの背景を言っておくと・・・・・・

チャップリンは、この映画で二役演じています。ヒトラー的人物ヒンケルと、ユダヤ人の床屋チャーリーです。

最後のシーンでは、このユダヤ人の床屋さんは、ヒンケルの側近たちにヒンケルだと間違われてしまったのです。似てるからね。

ヒンケル役(独裁者)

チャーリー役(ユダヤ人の床屋)

チャーリー
いや、違うし。オレ、ユダヤ人だし

と言ったら、まあヤバいことになるのは目に見えているので、ヒンケルのふりをしますが、なんと、多くの兵士の前でスピーチをしなくてはいけないはめに!

さて、ユダヤ人の床屋チャーリーは、皆の前でどんな演説をしたのでしょうか?

映画『独裁者』映像でチャップリンの迫真の演技を確認!

さてはともあれ、どうぞ映像をご覧ください。

あらすじがわからないのにラストシーンを観るのは抵抗がある、という方。どうぞ最初からDVDなりでご覧くださいね。著作権が切れた関係で格安で(500円とか)で販売されていますから。

映像は3種類貼り付けました。

1つ目の動画

日本語字幕がついているもの。

チャップリンは少し早口で演説していますので、字幕のそのスピードに合わせなくてはいけないためか、かなり意訳されています。

2つ目の動画

英語の字幕つきです。

もう一度同じシーンの映像を貼っておきました。

3つ目の動画

字幕なし。英語の勉強に最適。BGMが流れていないので、英語に集中できます。

日本語字幕つき映像

 

英語字幕つき映像

 

字幕なしの映像(BGMなし)

 

英語の勉強に最適!『独裁者』名スピーチのスクリプト& 和訳 と解説

人種関係なく皆を助けたい

 

I'm sorry, but I don't want to be an emperor.
申し訳ないが、私は皇帝などになりたくない。 

That's not my business.
皇帝になることは、私のやりたいことではない。 

I don't want to rule or conquer anyone.
誰に対しても支配や征服などしたくない。

I should like to help everyone if possible-Jew, Gentile- black man- white.
できれば皆を助けたいのだ。ユダヤ人にしろ、キリスト教徒にしろ、黒人にしろ、白人にしろ、皆を。

gentile: (ユダヤ人にとっての)異邦人 → キリスト教徒

この映画は1939年1月1日から制作が開始され、1939年9月9日~1940年10月2日まで撮影が行われました。

プレミア公開が1940年10月15日でした。

年号にこだわった理由は以下の2つです。

ヒトラー台頭の年

ポイント

① 映画製作時は、ヒトラーが勢力を拡大させている時期だった。

1938年3月:オーストリア併合
1939年1月1日:『独裁者』製作開始
1939年3月:チェコスロバキア併合
1939年9月1日:ポーランド侵攻
1939年9月9日:『独裁者』撮影開始(1940年10月2日まで撮影)
1939年9月3日:第二次世界大戦開戦

出典:German Federal Archives (Sudetendeutschland: Eger empfängt den Führer.),オーストリア併合後にウィーン市内をパレードするヒトラー(1938年10月)

このように、ヒトラーがポーランド侵攻し、第二次世界大戦への拡大していった1939年9月に、チャップリンはこの映画『独裁者』の撮影を開始したのです。

公民権法成立前

ポイント

② アメリカ国内で、アフリカ系アメリカ人が公民権を得たのは1963年。

『独裁者』製作時、1939年。

出典:Wikipedia (Public Domain), 有色人種専用の水飲み場(1950年頃)

60年代ですら、南部ではレストランや公共の乗り物に黒人専用の席があるなど、まだまだバリバリ黒人差別が激しかったのです。

なので、「黒人を助けたい」というこのセリフは、現在以上に重みのある勇気ある言葉だということを伝えたかったのです。

大地は豊かで皆に恵みを与えてくれる

We all want to help one another.
私たちは皆、お互いを助けたいと思っている。

Human beings are like that.
人間とはそういうものだ。

We want to live by each other's happiness-not by each other's misery.
他人の不幸ではなく、お互いの幸福によって生きたい。

We don't want to hate and despise one another.
私たちはお互い憎み合ったり、軽蔑なんかしたくない。

In this world there's room for everyone and the good earth is rich and can provide for everyone.
この世界には皆全員に場所がある。大地は豊かで、皆に恵みを与えてくれる。

one another: お互いに

暗記したい名セリフなので、もう一度引用します。

チャーリー

In this world there's room for everyone and the good earth is rich and can provide for everyone.

この世界には皆全員に場所がある。大地は豊かで、皆に恵みを与えてくれる。

貪欲に欲しがる気持ちが孤独を引き起こす

 The way of life can be free and beautiful, but we have lost the way. 
人は美しく自由に生きられるはずなのに、私たちは道を失ってしまった。

Greed has poisoned men's souls-has barricaded the world with hate-has goose-stepped us into misery and bloodshed.
貪欲が人の魂を毒し、憎しみを込めて世界をバリケードで封鎖してしまったのだ。貪欲が私たちを悲劇と殺戮へと軍隊歩調で追いやったのだ。

We have developed speed , but we have shut ourselves in.
私たち人間はスピードを開発してきたが、自分自身を閉じ込める結果となってしまった。

Greed: 貪欲

「もっと権力が欲しい」「もっと広大な土地が欲しい」「もっと・・・」とか、「ここは私の土地だ。入ってくるな。」「そこも私の土地だ」というように、飽くなき欲が諸悪の根源だ、ということを言いたいのでしょうか。

例えば、産業革命により、物を生産するスピードは格段に速くなっていきました。ベルドコンベアーかなんかで、大量生産すると、あっという間に物が出来てしまいます。一つ一つ丁寧に、一人で作っていたころに比べれば、時間が随分かからないですみます。産業革命により、私たちは多大な恩恵を得たのです。

でも。そのために、人間は孤独になってしまったという負の一面もあります。人間は単なる大きな機械の一部。部品になってしまった。

『モダン・タイムス』1936年、チャーリー・チャップリン

電車に乗って通勤すると、皆が黙々と電車に乗り込んだり、エスカレーターを歩いていたり、マニュアルに書かれている言葉で(自分の考えた言葉でなく)駅員がアナウンスしている姿を見かけたりします。そこには人間同士の心の触れ合いがありません。

現代社会はスピードを開発したおかげで「効率」は良くなったのかもしれませんが、より孤独を感じてしまう環境に変えてしまった側面もある、と言えるかもしれません。

goose-stepped
ひざを曲げずに脚を高く上げる行進歩調のこと。第二次世界大戦中のドイツ兵の行進に見られた。

出典:Wikipedia Goose step

goose-stepを動詞として使う場合、自動詞(vi)の使用例しか辞書では掲載されていないのですが、ここでは他動詞(vt)として使われていますね。まあ、intoは変化を表す前置詞、ということを考えると、「私たち」を「悲劇と殺戮」へと追いやった、ということなのでしょうね。

Machinery that gives abundance has left us in want.
富を生み出すはずの機械が、私たちをどんどん貧乏にしてきた。

 Our knowledge has made us cynical; our cleverness, hard and unkind.
知識は私たちを皮肉屋にした。知恵は私たちを非情で冷酷にした。

We think too much and feel too little.
私たちは考えてばかりで、感じることが出来なくなってしまった。

More than machinery we need humanity.
機械が増えれば増えるほど、私たちには人類愛がより必要なのだ。

More than cleverness, we need kindness and gentleness.
知識が増えれば増えるほど、優しさや思いやりが必要なのだ。

Without these qualities, life will be violent and all will be lost.
そうでなければ、人生は暴力で満ち、すべてを失ってしまう。

want: 欠乏、不足; 困窮、貧困; 必要


<例文> Want is the mother of industry. (必要は勤勉の母)

our cleverness, hard and unkind

our cleverness has made us hard and unkind

機械が増えて、生活が楽になった部分も確かにあると思うんです。洗濯機とかね。一枚一枚洗っていたら、とても大変。

でも、携帯電話にパソコン、車にバイク、i-padにDSなど、機械を増やすと、お金かかるようにできていますよね。ふ~。

それにしても。シンプルな英語なのに、意味が深い!もう一度英語を引用します。

チャーリー

We think too much and feel too little.
私たちは考えてばかりで、感じることが出来なくなってしまった。

我々は機械じゃない!

The aeroplane and the radio have brought us closer together.
飛行機やラジオのおかげで、私たちはお互いの距離を縮めることができるようになった。

The very nature of these inventions cries out for the goodness in man - cries for universal brotherhood - for the unity of us all.
こういった発明品の本質は、人間の良心や、国境を越えた兄弟愛や、私たちが団結することを強く訴えかけることにある。

Even now my voice is reaching millions throughout the world - millions of despairing men, women, and little children - victims of a system that makes men torture and imprison innocent people.
今でさえも、私の声は世界中の何百万人もの人々のもとに届いている。絶望している男女や子供たちのもとに。罪のない人たちを拷問し投獄する組織の犠牲者のもとに。

人間が発明した全てのものが諸悪の根源ではないことを改めて、チャーリーは確認しています。

チャップリンは、自分の主張を多くの人に伝えるために「映画」という発明品を利用しています。この演説のシーンでも、ラジオのおかげで、遠くにいる人たちに希望を持つよう訴えかけることができます。

人間の発明品をどのように使うかが要ですね。

To those who can hear me, I say: 'Do not despair.'
いま、私の声が届いている人達に言おう。「絶望してはいけない」と。

The misery that is now upon us is but the passing of greed - the bitterness of men who fear the way of human progress.
いま私たちの上に覆いかぶさっている不幸というのは、貪欲がただ通過しているだけにすぎない。人間の進歩を恐れている人たちの敵意にすぎないのだ。

The hate of men will pass, and dictators die, and the power they took from the people will return to the people.
憎しみは消え去り、独裁者たちは死に絶えるだろう。民衆から奪いとった権力は、また民衆のもとに戻るだろう。

And so long as men die, liberty will never perish.
人間は永遠に生きることはできないのだから、自由は決して滅びることはないのだ。

 


Soldiers! Don't give yourselves to brutes -men who despise you and enslave you - who regiment your lives - tell you what to do - what to think and what to feel!

兵士たちよ!獣に身をまかせてはいけない!奴らは、君たちを軽蔑し、奴隷にし、生活を管理する。君たちが何をすべきか口を出してくる。考え方や感情にまで指図する!

Who drill you - diet you - treat you like cattle, use you as cannon fodder.
思想を叩きこみ、決められた食事を与え、家畜のように君たちを扱い、砲弾の餌食として使うだけだ。

こ、これは!

今まで「あー、当時の人たちって大変だったんだなぁ〜」と、他人事のようにこのスピーチを聴いていたかもしれません。でも「・・・あ」と徹底的に気づいてしまう箇所です。これは、今を生きる私たちにとっても重要なメッセージだということに。

学校や会社。組織や体制。全てが悪ではないのです。過去の人間たちが苦労して作り上げてきたものです。

でも、時として、組織や体制が、個人を過剰に管理し、個人の幸せを奪ってしまう一面もあります。

重要なので、もう一度引用します。

チャーリー

Don't give yourselves to brutes -men who despise you and enslave you - who regiment your lives - tell you what to do - what to think and what to feel!

獣に身をまかせてはいけない!奴らは、君たちを軽蔑し、奴隷にし、生活を管理する。君たちが何をすべきか口を出してくる。考え方や感情にまで指図する!

Don't give yourselves to these unnatural men - machine men with machine minds and machine hearts!
こんな自然に反する人間たちに身をまかせてはいけない!こんな機械の頭と機械の心を持った機械人間に!

You are not machines! You are not cattle! You are men!
君たちは機械じゃない!君たちは家畜じゃない!君たちは人間なのだ!

You have the love of humanity in your hearts.
君たちは心に人類愛を持った人間だ。

You don't hate, only the unloved hate - the unloved and the unnatural!
憎んではいけない。愛を知らない者だけが憎むのだ。

 

Soldiers! Don't fight for slavery! Fight for liberty!
兵士よ!奴隷になるために闘うな!自由のために闘え!

In the seventeenth chapter of St Luke, it is written the kingdom of God is within man, not one man nor a group of men, but in all men!
『ルカによる福音書』の17章に、「神の国はあなたがたの中にある」と書かれている。神の国は一人の人間や特定の人たちの中にあるのではない。一人一人、君たちのなかにあるのだ。

In you! You, the people, have the power - the power to create machines. The power to create happiness!
君たちの中に!君たち民衆は力を持っているのだ。機械を作り、幸せを生み出す力が!

↑の聖書の引用は、新約聖書のなかにある『ルカによる福音書』17章21節の引用です。念のため、17章20-21節日本語で引用してみます。

20節
ファリサイ派の人々が、神の国はいつ来るのかと尋ねたので、イエスは答えて言われた。「神の国は、見える形では来ない。
21節
『ここにある』『あそこにある』と言えるものではない。実に、神の国はあなたがたの中にあるのだ」

この聖書の箇所は、よく引用される箇所です。私の大好きな引用箇所です。

暗記したい箇所ですので、もう一度引用します。

チャーリー

In the seventeenth chapter of St Luke, it is written the kingdom of God is within man, not one man nor a group of men, but in all men!


『ルカによる福音書』の17章に、「神の国はあなたがたの中にある」と書かれている。神の国は一人の人間や特定の人たちの中にあるのではない。一人一人、君たちのなかにあるのだ。

人生を自由で美しくする力が、一人一人にある

You, the people, have the power to make this life free and beautiful - to make this life a wonderful adventure.
君たちには力がある。人生を自由で美しくする力が!人生を素晴らしい冒険にする力が!

Then in the name of democracy - let us use that power - let us all unite.
だから、民主主義の名のもとに、この力を使おうではないか!みんなで団結しよう!

Let us fight for a new world - a decent world that will give men a chance to work - that will give youth a future and old age a security.
新しい世界のために闘おう!皆に雇用の機会を与えよう。若者に未来を与え、老人に保障を与えよう。そんなまともな世界のために闘おう!

By the promise of these things, brutes have risen to power.
獣たちもこういった公約をかかげて権力を手にしたのだ。

But they lie!
だが、嘘だった。

They do not fulfill that promise.
奴らは公約を守らなかった。

They never will!
これからも実現させることはない!

Dictators free themselves but they enslave the people.
独裁者たちは自分だけを自由にし、民衆を奴隷にしたのだ。

Now let us fight to fulfill that promise!
さあ、この約束を実現させるために闘おうではないか!

Let us fight to free the world - to do away with national barriers - to do away with greed, with hate and intolerance. 
闘おう、世界を解放するために。国境を取り除くために。貪欲と憎しみと不寛容をなくすために。

Let us fight for a world of reason - a world where science and progress will lead to all men's happiness. 
闘おう、分別ある世界のために。科学と進歩がすべての人たちの幸福へと導くような世界のために。

Soldiers, in the name of democracy, let us unite!
兵士たちよ!民主主義の名のもとに、団結しよう!

ハンナへの呼びかけ

Hannah, can you hear me?
ハンナ、聴こえるかい?

Wherever you are, look up Hannah.
君がどこへいようと、ほら見上げてごらん、ハンナ。

The clouds are lifting!
雲が消えて、

The sun is breaking through!
太陽の光が差し込んできただろう?

We are coming out of the darkness into the light.
僕たちは暗闇から抜け出て、光のなかへいくんだ。

We are coming into a new world - a kindlier world, where men will rise above their hate, their greed and their brutality.
新しい世界に。心やさしい世界に。憎しみも強欲も残忍もないそんな世界に。

Look up, Hannah!
だから見上げてごらん、ハンナ。

ハンナとは、映画のなかでは、床屋のユダヤ人の恋人のことです。

出典:Wikipedia (Public Domain)

このヒロイン役のハンナの名前ですが、チャップリンの母親の名前もハンナでした。この映画撮影は1939年から開始されましたが、この10年前、1929年にチャップリンの最愛の母は亡くなりました。

出典:Wikipedia ハンナ・チャップリン(チャップリンの母)

 

The soul of man has been given wings and at last he is beginning to fly.
人間の魂には翼が与えられていたんだ。そしてついに人間は飛び始めたんだよ。

He is flying into the rainbow - into the light of hope, into the future, the glorious future that belongs to you, to me, and to all of us.
虹に向かって。希望のに向かって。未来に向かって。輝かしい未来に向かって。君や僕、みんながそこで暮らすんだ。

Look up, Hannah... look up!
だから見上げてごらん、ハンナ、見上げてごらんよ。

 

地球儀の風船をもて遊ぶシーン

ああ、もうひとつだけ付け加えさせてください。ラストの演説の最初と最後に流れる音楽はヒトラーが愛したワーグナーの『ローエングリン序曲』です。この映画のなかで、ヒトラー的人物ヒンケルが地球儀の風船で遊ぶシーンでも、この曲が使われているんです。

ヒトラーが地球をもてあそんでいることを暗示するシーンのあと、最後の演説で同じ曲を使用したことに、チャップリンの思いがこめられているような気がします。つまり、美しき地球=世界を、独裁者の手ではなく民衆の手に返そう、という思い。

出典:The Great Dictator, trailer

ワーグナー『ローエングリン序曲』

  • ヒトラーが愛した曲
  • 地球儀の風船をもてあそぶシーンで使用される
  • ラストの演説の最初と最後に流れる
  • 美しき地球(世界)を、独裁者の手ではなく、民衆の手に返す

 

まとめ

さて、いかがだったでしょうか。

歴史を振り返ってみればわかるように、映画を公開した後、チャップリンの願いむなしく、第二次世界大戦は収まらず、激化していきます。日本も参戦しました。

当時、日本はドイツと同盟を組んでいたので、当然、チャップリンの『独裁者』は日本での公開が禁止されていました。日本で公開できるようになったのは、映画が製作された20年後1960年のことでした。

『独裁者』が日本で公開されたのは、1960年(映画製作後20年経ってから)

そして、チャップリンは祖国アメリカからは赤呼ばわりされ、1952年に国外追放令を受けることになります。アメリカに再び戻ることが出来たのは、20年後の1972年でした。

チャップリンのその後
1952年:アメリカ国外追放
1972年:アメリカ国外追放令が解かれる

それでも、チャップリンのメッセージは今も生き続けています。この映画が作られてから80年近くたった今でも、全く色褪せていない。現代の私たちにも訴えかけてくるメッセージです。むしろ、後世に伝えていかなくてはいけないのだ、と信じております。

チャーリー

You, the people, have the power to make this life free and beautiful-to make this life a wonderful adventure.

君たちには力がある。人生を自由で美しくする力が!人生を素晴らしい冒険にする力が!

長い文章を最後まで読んでくださって、どうもありがとうございました。

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