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超監視社会:どんな社会で暮らしたいか?

 

Facebook、150社に個人情報を共有(利用者の承認なし)

利用者の同意なく、Facebook全利用者の個人情報へのアクセスを、Facebookが150社以上に許可していた、というニュースが流れました。2018年12月18日(米国現地時間)にThe New York Times (NYT) が報じたニュースです。

しかし、同様の問題が何度も起きているので、巷では「またか……」と一種の慣れも見られます。そこで「なぜ個人情報流出が、そんなに問題なのか?」を改めて考えてみたいと思います。

企業が国を超える?

かつてない巨大企業の台頭により、国よりも企業のほうが、実生活に強い影響力をもたらすことがあります。

「オバマとジョブズ、どちらが自分の生活に影響を与えているか、といえば、圧倒的にジョブズだ」という主旨の発言を宇野 常寛がして、面白い例えだと思いました(Weekly Ochiai 「日本社会をアップデートせよ」(NewsPicksの有料会員のみ閲覧可能のページに飛びます。無料体験もあります))。

もちろん現在でも私たちは国の枠組み内でしかできないことがたくさんありますが、政治と企業、どちらが自分たちの身近な生活を劇的に変えてきたか、という面に焦点を当てていくと、巨大企業の多大なる影響を認めざるをえません。

人との交流の仕方(直接会いに行く、手紙、電話 → Facebook, Twitter, Line, Apple)

音楽の聴き方(ライブやコンサートに行く、レコード、CD → Apple, Amazon, Spotify)

本や映像の購入(本屋に行く → Amazon)

買い物全般(商店街やスーパーに行く → Amazon)

情報収集(図書館に行く → Google, Microsoft, Yahoo, Instagram)

娯楽の一例 (テレビ → YouTube、TicTok)

※ 「Instagramを情報収集する際に利用する」ことを20代前半の方に聞きました。旅行する時など、その場所に行った事のある人のインスタをチェックするのだそうです。教えて下さった方、どうもありがとう!

今でこそ当たり前のように利用しているサービスですが、わずか20~30年の間に、巨大企業の提供するサービスによって、私たちの行動パターンは劇的な変化を遂げました。しかも、その巨大企業の力はどんどん大きくなり、数も限定され、独占状態となりました。

面白いデータ表を見つけました。「もしソーシャルネットワークが国だったら(If Social Networks were countries)」というものです。公開されたデータを再使用し、Excelで日本語の表を作ってみました。

出典:Date from Statista (2016) and CIA World Facebook

ソーシャルネットワークの利用者数を、各国民の数と比較して列挙してみると、Facebook利用者数(18億6000万人)が、人口世界一の中国(13億7300万人)を抜きます。Facebook 所有のMedia(WhatsAppとInstagram)の利用者数を合わせると、その数、実に36億6千万人。Facebook関連会社の利用者数は、他のどんな国と比べても圧倒的な数を誇ることになります。

もちろん、同じサービスを利用する者同士と、それぞれの国民を、同レベルで比較するのは無理があるかもしれません。しかしビッグデータのように「数」が必要な状況ではどうでしょう。とにかく数の多さが重要な場合は、企業は国より上回っているのです。

個人情報を見られて何がダメなの?

企業が国以上の人数のデータを収集し、自由にアクセスできることに、一種の気持ち悪さを感じていても、特に困らないと考える人もいます。

「自分は悪いことしてないし、するつもりもない。スパイやテロリストでもない。悪事を働く人だけが困るんでしょ。」

また、犯罪防止や捜査に役に立つ一面を考慮すると、「好ましくないが、やむを得ない」という意見もあります。

では、なぜ個人情報が見られる事を憂慮すべきなのか、以下の人たちの意見をみていきます。

エドワード・スノーデン

出典:Wikipedia (Laura Poitras)

エドワード・スノーデンは、アメリカ政府が一般国民を監視していると2013年に告発した人物です。スノーデンは、NSA(アメリカ国家安全保障局)とCIA(中央情報局)で勤務し、米軍に在籍していた時期もありました。彼が職務中に、米国政府の情報収集活動に深くかかわります。どのように個人情報を収集していたか、その手口も情報公開したことで、世界に衝撃を与えました。

たとえ主電源を切っても携帯電話は盗聴可能というのは、個人的にとても驚きました。また、巨大IT企業(マイクロソフト、Google, Yahoo, Apple, Facebook, YouTubeなど)も、NSAの個人情報収集に協力していたことも大変ショックでした。「IT企業は、大量の個人情報を簡単に見れるんじゃないかな。」「最悪、この情報を、企業が利用することもあるんじゃないの?」と、うすうす感じてはいても、証拠資料を突きつけられるとかなり衝撃を受けます。常日頃、今書いている時ですら、お世話になっている道具が、普通の一般市民をいともたやすく、政府が誰の許可なく監視できるというのですから。

ドキュメンタリー映画『シチズンフォー スノーデンの暴露』

上記の映画は、いかにアメリカ政府が、各国要人や犯罪者だけでなく一般市民を監視しているか、エドワード・スノーデン本人が語るドキュメンタリー映画です。2014年の作品を対象とした第87回アカデミー賞では、この映画が長編ドキュメンタリー賞を受賞しました。

TED Talk 「インターネットを取り戻すために」

Japanese translation by Yasushi Aoki.  Reviewed by Kazunori Akashi.

エドワード・スノーデンは、TED Talks に出演したこともあります。亡命中なので、スノーデンは会場に直接登場せず、プレゼンス・ロボットを通してのインタビューとなりました。

クリス・アンダーソン(TED代表者、キュレーター)が、「なぜ監視を気にする必要があるのか」とスノーデンに質問します。

悪いことしないなら問題ない?

13:09あたりから、クリスがスノーデンに質問します。

(CA) Ed, one response to this whole debate is this: Why should we care about all this surveillance, honestly? I mean, look, if you've done nothing wrong, you've got nothing worry about. What's wrong with that point of view?

(クリス)この議論に対しては こんな反応があります。「どうして そんな監視を気にする必要があるのか悪いことをしていなければ何も心配することはない」というものです。このような見方のどこが問題なのでしょう?

プライバシーの「権利」はいつ本当に必要になるか分からない

クリスの質問に対して、監視を気にする必要性の理由として、スノーデンはまず「権利はいつ必要になるか分からないので、権利を放棄すべきではない」と指摘します。

(ES) Well, so the first thing is, you're giving up your rights. You're saying hey, you know, I don't think I'm going to need them, so I'm just going to trust that,you know, let's get rid of them, it doesn't really matter, these guys are going to do the right thing.

(エド)第一に権利を放棄しているということです。「その権利が必要になることはないだろうし、信用しているから別にいらないよ。連中は正しいことをやるだろうから、別に問題ない」というわけです。

Your rights matter because you never know when you're going to need them.

権利が大切なのは、いつ必要になるか分からないからです。

政府や企業を信頼することは悪いことではないように思えますが、スノーデンが伝えたいことは「政府や企業に全権を委ねることの危険性」ではないでしょうか。たとえ「世間一般の考える悪事」に関わっていなかったとしても、特権階級に属する人たちの裁量次第で、個人を拘束できる可能性が出てきます。メールやSNSのやり取りを政府が自由に閲覧できるのなら、個人の弱みを探りだし、圧力をかけ、巨大な機関にとって不都合な事実を言わせないようにすることができます。

他人の目を意識しないで、自由に行動することの大切さ

ただ、「いつ必要になるか分からない権利を放棄すべきではない」と言われても、正直まだピンとこないかもしれません。そこで、2つ目の理由をスノーデンは語ります。

Beyond that, it's a part of our cultural identity, not just in America, but in Western societies and in democratic societies around the world.

さらにこの権利はアメリカだけでなく、西洋社会や世界の民主主義国社会における文化的アイデンティティの一部をなすものです。

民主主義国家にとって、プライバシーの「権利は文化的アイデンティティ」と指摘しますが、スノーデンは具体例を出して更に説明します。

People should be able to pick up  the phone and to call their family, people should be able to send a text message to their loved one, people should be able to buy a book online, they should be able to travel by train, they should be able to buy an airline ticket

我々は家族に電話を掛けることができるべきであり、好きな人にメールを送れるべきであり、好きな人にメールを送れるべきであり、ネットで本を買えるべきであり、電車で旅行できるべきであり、航空チケットを変えるべきなのです。

家族や好きな人に電話やメールをすること、ネットで本やチケットを購入すること、電車で旅行すること。普段は当たり前のように自由に行っていることです。このような行動が制限される可能性を指摘します。

without wondering about how these events are going to look to an agent of the government, possibly not even your government years in the future, how they're going to be misinterpreted and what they're going to think your intentions were. We have a right to privacy. We require warrants to be based on probable cause or some kind of individualized suspicion because we recognize that trusting anybody, any government authority, with the entirety of human communications in secret and without oversight is simply too great a temptation to be ignored.

しかもそういった行動が、何年も経ってからどこかの国の機関の目に留まってどう思われるだろうかとか、自分の行動が誤解され、意図を詮索されやしないかと心配しなくていい、というのが重要です。我々にはプライバシーの権利があるのです。しかるべき理由や個々の容疑に基づいた令状を求めるべきです。誰であれ、どこの政府であれ、人々の通信すべてを、人目の届かないところで、監督も付けずにゆだねてしまうというのはあまりに危険であり見過ごせません。

「誰かに見られている」ことを意識すると、私たちは自分の本当にやりたいことを自制する傾向にあります。人の生命を傷つけるような悪事を抑制するのなら、監視は意味のあることかもしれませんが、巨大機関や特権階級に属する人物たちが、自分たちの利益を守るために、多くの一般市民を監視したとしたらどうでしょう。その結果、個人が自由にやりたいことができない環境になったら?

例えば、「エドワード・スノーデンのことをもっと調べたい」と思ったとしても、「もし彼のことをネットで調べたら、本や映画をみたら、あとで自分に困ることが起きるかな。念のため、やめておこう」と自分から行動をやめてしまうかもしれません。海外ドラマ『シリコンバレー』では、巨大IT企業が提供する独占型インターネットではなく、オープンな中心のないインターネット(監視や独占が不可能)を作ろうとする話がありますが、「こんな話を作ったら(観たら)反抗的な人間と思われるかも」と、関わることをやめるかもしれません。このように、本当は興味あることを、自らの意志で自制してしまう可能性もあるかもしれないのです。

監視社会を考察した重要人物

ジョージ・オーウェル

出典:Wikipedia (Branch of the National Union of Journalists (BNUJ).)

監視社会を考察した文章に必ず引用される、と言っても過言ではないフレーズ "Big Brother is watching you."(「ビッグ・ブラザーがあなたを見ている」)。イギリス人作家ジョージ・オーウェルの小説『1984年』(1949年刊行)に、何度も出てくるフレーズです。ビッグ・ブラザーは、この小説に登場する支配者ですが、一度も本人自身は登場せず、ポスターやテレスクリーン(テレビと監視カメラの機能がついた装置)に登場するのみで、本名すら分かりません。それにもかかわらず、国民はビッグ・ブラザーの存在を常に意識することになります。

ジェレミー・ベンサム(1748-1832)

出典:Wikipedia (Public Domain)

ジョージ・オーウェルの描く未来小説『1984年』から200年前、新しい収容所を考案した人物がいました。その名はジェレミー・ベンサム(Jeremy Bentham)。「最大多数の最大幸福」("the greatest happiness of the greatest number")を唱えた功利主義の創始者です。ベンサムはオーウェルと同じイギリス人です。

ベンサムが考案した収容所は、「全てを見通す」という意味のギリシア語語源「パノプティコン」と名付けられました。どのような構造になっているかというと、円形型の建物の中央に看守塔があり、その周りに収容者の個室が看守塔に面するように設置されています。

出典:Wikipedia (Public Domain)

出典:Wikipedia (PostMan)

収容者は、他の収容者や看守の姿を見ることはできませんが、看守は中央からすべての収容者を監視することが可能でした。何より巧妙なのは、一日24時間いつでも看守は監視可能ですが、収容者は「いつ見られているか分からない」という点です。実際、ベンサムは「看守は常に監視する必要はない」と語ります。「見られているかもしれない」という心理により、収容者は良い行いを続けるというのです。

収容所の話だったら、「ナイス・アイディアだね!」と反応するかもしれません。しかし、現在の私たちの社会構造がパノプティコンそのもの、と考えるとどうでしょうか。冒頭に紹介したフェイスブックの個人情報の流出問題を思い出してください。インターネットの構造が、パノプティコンとなっていないでしょうか。個人はいつでも監視される状況にありながら、いつ見られているか分かりません。

ナショナル・ジオグラフィック(2018年4月号)は『超監視時代』が特集で、町中に張り巡らされている監視カメラについて詳しく取材しています。インターネットという仮想空間も、町中という現実空間も、「いつでも監視可能で、いつ見られているか分からないパノプティコン」となっているかもしれません。

国民の議論なしに始まっている超監視社会

インターネット空間も、現実空間も、犯罪者やテロリストだけでなく、一般市民も監視可能な状況にある。しかし、犯罪予防や事件解決の側面を考えるとやむを得ない、といった考えはなかなか否定できないと思います。しかし、一番の問題なのは、国民の議論なしに、もうすでに超監視社会が始まっているという状況なのかもしれません。

ユヴァル・ノア・ハラリ

出典:Wikipedia (Daniel Naber)

ベストセラー『サピエンス全史』の作者、ユヴァル・ノア・ハラリは、『ホモ・デウス』のなかで、国民の議論なしに巨大企業が世界を支配していくことに警鐘を鳴らしています。

国の政府であれば、国民に選ばれた役人が、それなりの議論を踏まえて法律を整備しなければならないかもしれません。しかし、企業を運営する人間を国民が選んだわけではありませんし、国以上の力を持ち始めた巨大企業は、国民の議論なしに新しいシステムを導入できる力を持っています。善良なCEOであればいいのですが、そうでなかったら?先に挙げたナショナル・ジオグラフィックのYouTube動画では、”Will Big Brother save us or enslave us?" (「ビッグ・ブラザーは救いの手か?それとも私たちを奴隷にするのか?」)と最後に述べています。

今日からできること

話が大きくなってしまって、自分にできることなどない、と思うかもしれません。些細なことのように感じるかもしれませんが、少なくとも次のことを検討してみる価値はありそうです。

Facebook から削除しておいたほうがいい12の項目

Facebookを使い続けるなら、以下の12点は削除しておいたほうがよいようです。(出典:12 things you might want to delete from your Facebook page)

電話番号

最悪の場合、ストーカーから連絡がきてしまうかもしれません。

誕生日

誕生日は、個人を特定するのに重要なパスワードになりえます。誕生日の情報があると、名前、住所、銀行口座に簡単にアクセスできる可能性が高まります。

ほとんどの「友達」

オクスフォード大学心理学専攻のロビン・ダンバー教授(Robin Dunbar)によると、安定した人間関係を築けるのは約150人とのことです。3375人のフェイスブック利用者をリサーチした結果、信頼できる友人は4.1人、「精神的危機的状況」の場合に感情を共有する相手は13.6人と数字を出しました。(下記の写真は、ロビン・ダンバー教授)


出典:Wikipedia (Festival della Scienza)

もし「友達」の数だけが多くなり過ぎて、やり取りが負担になっているのだとしたら、自分にとって大切な本当の友人だけに集中した方が、精神的にもいいかもしれません。

子どもや家族の写真

生まれたときからインターネットがあった世代の子供たちにとって、大きくなってからも見てみたい「全世界に公開された自分の情報」とは何でしょうか。赤ちゃんや子供は、自らの意志で自分の写真や情報を公開したわけではありません。後で、子供たちが困らないように、親が気を付けた方がいいかもしれません。

子供が通っている学校の情報

子供をターゲットとした性犯罪者に、情報を与えてしまう可能性があります。

位置情報サービス

2015年のTechCrunchの発表によると、5億人以上のフェイスブック利用者が、携帯電話のみでフェイスブックにアクセスしています。つまり、5億人以上の人が、位置情報をネット上で公開し、追跡可能である状態とも言えます。

自分の上司

仕事上必要な場合もあるかもしれませんが、会社から逐一監視される可能性を考慮すると、リラックスしたSNSを楽しみたい場合は削除したほうが健全かもしれません。

自分の居場所のタグづけ

自分の居場所を全世界に公開しているようなものです。

休暇へ行く時期と場所

ソーシャルメディアに自分の休暇先を公表していた場合、空き巣に入られても保険金が支払われないようです(This is Money)。空き巣に入られる可能性が高まるので、休暇へ行く時期と場所は公開しないほうがよさそうです。

交際ステータス

自分に交際相手ができたとか、別れたといった情報は、フェイスブック上で公開しないほうがいいとのこと。

クレジットカード情報

決して公開してはいけません。

搭乗券

飛行機に乗って休暇にでかけたり、国際的に仕事をしていることをちょっと自慢したくなるかもしれませんが、やめたほうが賢明です。飛行機会社に提示した情報が外部に漏れる可能性が高くなります。

まとめ

簡単に結論がでる問題ではないですね、個人情報流出問題に伴う超監視社会のことは。つまるところ、自分はどんな社会に住みたいのかどんな世界に暮らしたいのか、ということなのかもしれません。「無意識のうちに、誰とも知らない存在を危惧し、自分の行動を制限してしまう社会」なのか、それとも「自由に選択できる社会」なのか。あるいは「多少の自由はなくなるかもしれないが、名目上安全が保障されている社会」なのか。少なくとも今言えることは、監視問題に無関心でいることは危険国民同士の公の話し合いが重要、ということだと思います。

長い文章を読んでくださって、どうもありがとうございました。

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